美濃伝について
美濃伝
美濃伝の成立経過
美濃伝は五箇伝中で最も新しい伝法。
南北朝期に、正宗十哲の1人である志津三郎兼氏(しづさぶろう かねうじ)が美濃国の志津へ、金重(かねしげ)が美濃国の関(せき)へ移住して、相州伝をもたらした。
もともと大和伝系であった美濃国で、大和伝に相州伝が加味された新たな作風である美濃伝が生まれた。
そして南北朝時代、戦国時代といった争乱の時代に急速に繁栄した。
特に戦国時代にこれほど繁盛したのは、美濃国が東国や北陸などへの中継地であり、美濃国および周囲の国々に名だたる武将が群雄割拠していたため、必然的にこれらの武器需要に答える拠点となった。

著明な刀工
   志津三郎兼氏  孫六兼元  和泉守兼定
   関七流


美濃伝の特徴
美濃伝の特徴
斬れ味と堅牢さの実用本位を追求して出来た作風
美濃伝は匂本位の伝法で、初期の兼氏や金重、直江志津などは沸本位の相州伝の作風である。

1467年の応任の乱を境に、戦国動乱の世となったことを背景に、斬れ味と堅牢さの実用本位を追求して来た「美濃刀」への需要が高まることとなる。


美濃伝と刀工
志津三郎兼氏
  人物
概要
出生地は大和。
生年を弘安七年(1284年)、没年を康永三年(1344年)享年六十歳とされる。
手掻派で包氏を名乗り、大和伝を習得。
のち美濃(現岐阜県海津郡南濃町)の志津村に来往して志津三郎兼氏と改める。
美濃伝を学んだのち、相模に移り五郎入道正宗の弟子となる。

系譜
初代兼氏
生年を弘安七年(1284年)、没年を康永三年(1344年)享年六十歳とされ、大和手掻派の出身といわれている。
しかしこれには諸説があり、大和千手院派の出身、同じく千手院行真派出身、金行(正宗十哲の一人とされる金重の子)の娘婿、金行の孫娘の子、大和長包の子、関兼永の子などの説がある。
大和国から美濃国多芸郡志津に移住したのを機に名前を兼氏と改め、志津三郎兼氏と名乗ったとされる。
改名前の包氏の作品を「大和志津」と呼ばれ、また無銘兼氏極めの作品中、大和風の特徴が著しい作品もまた「大和志津」と呼ばれている。

しかしこれらに異論を唱える見識者もいて、その方々の意見として「大和志津」とは兼氏同門及びその一門のうち美濃国へ移住せず、大和国に残った鍛冶集団の作品を「大和志津」としている。

 
作刀


孫六兼元(まごろくかねもと)
  人物
美濃三阿弥派出身。2代目兼元が著名で、永正の頃に初代兼定のもとで修行し、その息子2代目兼定と兄弟の契りを結んだという伝説もある。
戦国時代に武田信玄・豊臣秀吉・黒田長政・前田利政・青木一重など多くの武将が佩刀し、実用性をもって知られる。
特に青木一重所持の青木兼元は朝倉家の真柄直隆を討ち取った刀として、前田家伝来の二念仏兼元は、身体を斬られた人が念仏を二度唱えて死すなど斬れ味で著名である。
2代目兼元(孫六兼元)以降、現代まで門跡が続く。

作刀
刀身に「三本杉」と称する刀紋を施し、折れず、曲がらず、切れ味の良い名刀を造った。


和泉守兼定(いずみのかみ かねさだ)
  人物
兼定は同銘の刀工が複数存在する。
  初代:通称「親兼定
  2代:和泉守を受領し和泉守兼定と銘する。通称「之定
  3代:通称「疋定」(ひきさだ)

特に2代の通称「之定」はこの時代の美濃国では随一の刀匠といわれ有名である
「五の目」という刀紋を施した気品の高い作風で知られ、「之定」と「疋定」の銘がある。

2代 「之定」
「之定」
甲州出身で美濃に来て初代兼定の門人になる、後に養子になる。
その刀は切れ味よく、最上大業物にランクされている。
その作刀期間はかつては明応2年(1493年)紀の作刀を最古とし、同年から大永6年(1526年)頃までと推定されていたが、『室町期美濃刀工の研究』(鈴木・杉浦、2006)は、文明二二年(文明四年・1472年)銘の平脇指を紹介し、これを2代兼定の最古作とみなしている

之定(ノサダ)を所持した武将
武田信虎、津田信澄、柴田勝家、明智光秀、池田勝入斎、細川幽斎、細川忠興、黒田長政、森長可などが愛用し、また島津家にも「之定」の名刀が伝わっていたとされる。


関七流
  人物


作刀




初載2018-10-8
参考資料等
「図解 日本刀事典―刀・拵から刀工・名刀まで刀剣用語徹底網羅」 (歴史群像編集部 2006)
「図説・日本刀大全―決定版 」 (歴史群像シリーズ 2006 稲田和彦
「写真で覚える日本刀の基礎知識」  (2009 全日本刀匠会)
「日本刀の科学 武器としての合理性と機能美に科学で迫る」  (サイエンス・アイ新書 2016)
「日本刀の教科書」 (東京堂出版 2014 渡邉 妙子)

『日本刀図鑑』 (宝島社、2015、別冊宝島2646号)

『銘尽』(めいづくし) 国立国会図書館 (http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1288371)

Wikipedia 「正宗」 「貞宗」 

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美濃伝について 
美濃伝
「五箇伝」のひとつで、最も新しく、美濃国を中心として興隆した刀工の流派。
南北朝末期から江戸幕末まで続いた。
米子(西伯耆)・山陰の古代史