刀剣書 米子(西伯耆)・山陰の古代史
古来より、小鍛治に関する多くの刀剣書がある。
しかし大鍛冶に関する物は皆無と言っても過言ではない。
ここでも小鍛治に付いての書物を記載する。
鎌倉時代の刀剣書および類
泰時評定分 (やすときひょうじょうぶん)
概要
  鎌倉幕府3代執権北条泰時(在職1224年~1242年)のときに名のある刀工を選んだもの。
  一条天皇の御宇の刀工である、伯耆安綱や三条宗近など、11名刀工を評定した。
  原本は現存せず逸文が、「上古秘談抄」に残って居る。

評定された刀工
  伯耆安綱三条小鍛冶宗近、備前包平(河内包平とも)、備前正恒、大和行平
  備前助包、備前(伯耆)為吉、備前義則(義憲)、備前信房、備前高平、備前助平


最明寺殿評定分 (さいめいじどのひょうじょうぶん)
概要
鎌倉幕府5代執権北条時頼(在職1246年)~1256年)のときに名のある刀工を選んだもの。
泰時評定分11名の刀工を除き、新たに22名刀工を選定している。

評定された刀工
  定秀(豊後)  家重(豊後)  正国(薩摩波平)  行重(舞草奥州)  有成(河内)  行平(豊後号紀新太夫)
  正恒(備前)  助包(備前)  国弘(相州沼間住藤源次)  関東(遠江国住人、遠江国トモ打、円修院トモ打)
  国盛備前大宮ト打  助盛備前国盛子  光世(筑後三池田多)  行仁(薩摩法師) 
  雲同(奥州 後白河院之御宇或山内斎藤太夫)  月山(奥州或出羽秀平鍛冶)
  為清(伯耆国□□三郎太夫)  日乗(伯州長江住法師)  盛国(大同年中鍛冶眞云々、奥州又和州)
  貞国(相州山内瀧四郎太夫)  友成(備前)  安則(和州)


最勝園寺殿評定分 (さいしょうおんじどのひょうじょうぶん)
概要
9代執権北条貞時(在職:1284年~1301年)のときに名のある20刀工を選んだもの。
元寇を経て、作刀様式が変化した。

刀工


上古秘談抄
概要
1314年、日本刀成立以前を「上古七人鍛冶」として二群に分けて載せる。
3代北条泰時、5代北条時頼、9代北条貞時による「評定」、および注進物可然物に関する記述は本書が初見となる。

刀工
 大宝(701年~704年):友光、天国、文寿
 和銅(708年~715年):神息真守、実次(備前あるいは熊野鍛冶)、藤戸


銘尽 (めいづくし)
  原本と写本
正和銘尽(しょうわめいづくし)」
  鎌倉時代 正和5年(1316年)に記された、我が国における現存最古の刀剣書。
  原本は現存せず、幾つかの写本が現存している。

「観智院本銘尽」  
  1423年に書写された。
  東寺(教王護国寺)の塔頭の一つ、観智院が旧蔵していたことからこう呼ぶ。

「銘尽(龍造寺本)」
  1351年に書写されたとみられる。
「観智院本銘尽」  国会図書館蔵  http://www.ndl.go.jp/exhibit/50/html/wa1-4/mokuji.html)



概要
紙本墨書。
現装は仮綴じの冊子装で、寸法は27.5×21.0センチ。墨付45丁、ただし首部を欠失する。
書名は第9丁裏に「銘尽」とあることによる。
国立国会図書館の所蔵で、明治43年(1910年)に購入された。
奥書から応永30年(1423年)の書写であることがわかるが、本文中には正和5年(1316年)からさかのぼって年数を数えている箇所があり、正和5年に記載された原資料がもとになっている。
ただし、本写本の記載には重複や齟齬がみられることから、複数の資料をもとにして書写されたものと推定される
第42丁裏には、南洞院御秘蔵本を行蔵坊幸順が、応永30年12月21日に写した旨が記されている。
また、裏表紙には「京都東寺子院観智院所伝刀剣鑑定之書 応永三十年之古写 本書正和五年著作 勧智院法印権僧正住寶所貺 津田葛根蔵」と記される。
また、第45丁(最終丁)の次にある貼紙には、朱書きで伴信友『古文零聚巻六』抜書ありと記される

校正
第1丁表 - 第1丁裏 (no.5-6)
  正宗、貞宗、国盛、助盛、国宗、定利、国長、延寿太郎、国信、国吉、定俊、兼永、中次郎、了戒、光包、長光、弟子、
  備前備中雑鍛冶三十六名、

第2丁表 - 第9丁表 (no.6-13) 
  太刀刀作善悪日之事、古今諸国鍛冶之銘(と刀の特徴)

第9丁裏 - 第10丁裏 (no.14)
  銘尽(解説)、神代鍛冶(解説)

第10丁裏 - 第20丁表 (no.15-25)
日本国鍛冶銘(解説) 

第20丁裏 - 第32丁裏 (no.25-37)
  系図(と解説):青井、粟田口、千手院、来、相模鍛冶、(山城)、大和国、
  備前鍛冶次第不同、備中鍛冶次第不同、陸奥鍛冶次第不同、鎌倉鍛冶、来系図、(他)

第32丁裏 - 第34丁裏 (no.37-39)
  後鳥羽院御宇被召鍛冶十二月結番次第、大寶年中(友光、天国等)

第35丁表 - 第36丁表 (no.39-40)
  一條院御宇(助包、安綱等)

第36丁裏 - 第37丁表 (no.41)
  鎮西鍛冶、奥州鍛冶

第37丁表 - 第39丁表 (no.41-43)
  後鳥羽院鍛冶(行平、正恒等)、後鳥羽院御宇鍛冶詰番次第

第39丁表 - 第40丁表 (no.43-44)
  粟田口鍛冶系図、奈良鍛冶、伯耆鍛冶、伯耆国次第不同

第40丁裏 - 第41丁裏 (no.45-46)
  散在国(友安等)、不知国鍛冶(天国等)、釼作鍛冶前後不同、

第42丁表 - 第42丁裏 (no.46-47)
  神代より当代までの上手鍛冶(藤戸等)、奥書(幸順)

第43丁表 - 第45丁裏 (no.47-50)
  諸国名、奥書(岩菊之)

  カッコ内の数字は、国立国会図書館デジタルコレクションのコマ番号を示す。


室町時代の刀剣書および類
本阿弥光心押形集(ほんあみこうしんおしがたしゅう)
概要
  本阿弥家七代当主光心の著。
  刀の押形集。鳴狐や不動国行などの名物が記載されている。
  原本は存在せず、現存するものは写本。
  1556年(弘治2年)3月の奥書。



江戸時代 
継平押形(つぐひらおしがた)
  概要
1717年(享保2年)に近江守継平が徳川将軍家の蔵刀の刀剣の押形を作成したもの。
初め蔵刀拝見を許され、さらに押形取りを願い出たところ、それも許可されたので、十巻の巻物にして二部作り、一部を八代将軍吉宗に献上した。
継平押形 : 附・本阿弥光徳同光温押形集  国立国会図書館 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1190999



享保名物帳
概要
徳川幕府8代将軍・徳川吉宗の命により、本阿弥家13代当主本阿弥光忠および本阿弥一族が編纂して幕府に提出した名刀リスト。
1719年(享保4年)の11月に幕府に提出された。

内容
当時既に失われたものも含めて、世に名高い名刀約250口を収録した台帳で、江戸時代の武家社会において名刀の出自や伝来を公的に保証して格付けした。
戦国大名などが愛用した粟田口、正宗などの名物が記録されており、徳川家(将軍家および御三家)の名刀を筆頭に、加賀藩前田家、福岡藩黒田家など各大名家に伝わる名刀の伝承や逸話を記録している。

構成
1719年(享保4年)の11月に幕府に提出された正本と、本阿弥家の手元に置かれた副本があった。
現在は正本も副本も残っておらず、転写された書籍が残っているのみ。

「上巻」、「中巻」、「下巻」(焼失之部)からなる正本と副本には相違点も多くい。
副本の方が正本より多くの刀が記載され、由来なども詳細。
また、“名物追記”、“昔名剣御所之剣”という章を作って新たに名物を追加した、芍薬亭長根(本阿弥光恕)編纂の「刀剣名物帳」が存在する 。
これは本阿弥家の「留帳(折紙発行の記録台帳)」の内、名物や名刀を抜粋した「名物扣」を元に追加されたため。



明治以降
日本刀工辞典 古刀篇、新刀編
  日本刀工辞典 古刀、新刀編 1937年 藤代商店
藤代義雄、藤代松雄(人間国宝) 著
国立国会図書館  https://www.dl.ndl.go.jp/api/iiif/1116200/manifest.json





初載2018-10-11

参考資料
「日本刀工辞典 古刀篇」 藤代義雄・藤代松雄著 (藤代商店 1937)

「図解 日本刀事典―刀・拵から刀工・名刀まで刀剣用語徹底網羅」 (歴史群像編集部 2006)
「図説・日本刀大全―決定版 」 (歴史群像シリーズ 2006 稲田和彦
「写真で覚える日本刀の基礎知識」  (2009 全日本刀匠会)
「日本刀の科学 武器としての合理性と機能美に科学で迫る」  (サイエンス・アイ新書 2016)
「日本刀の教科書」 (東京堂出版 2014 渡邉 妙子)

『日本刀図鑑』 (宝島社、2015、別冊宝島2646号)

『銘尽』(めいづくし) 国立国会図書館 (http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1288371)


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