炭素14の基礎理論
基礎的理論
放射性崩壊とは
不安定な原子核(放射性同位体)が様々な相互作用によって状態を変化させる現象。

同位体
同じ元素で中性子の数が違う核種の関係を同位体と呼ぶ。
同位体は安定なものと不安定なものがあり、不安定なものは時間とともに放射性崩壊して放射線を発する。
放射性同位体の例としては、三重水素(3H)、炭素14(14C)、カリウム40(40K)などがあげられる

放射性崩壊の種類
①アルファ崩壊
アルファ粒子を放出し、陽子2個・中性子2個を減じた核種に変わる。
核分裂反応の一つとして認識されることもある(例:226Ra→222Rn)。
②ベータ崩壊
質量数を変えることなく、陽子・中性子の変換が行われる反応の総称で、β-崩壊(陰電子崩壊)、β+崩壊(陽電子崩壊)、電子捕獲、二重ベータ崩壊、二重電子捕獲(Double electron capture)が含まれる。
②ガンマ崩
それぞれの崩壊を終えた直後の原子核には過剰なエネルギーが残存するため、電磁波(ガンマ線)を放つことにより安定化をしようとする反応である。

半減期(Half-life)
放射性核種が崩壊して別の核種に変わるとき、元の核種の半分が崩壊する期間。
これは核種の安定度を示す値でもあり、半減期が短ければ短いほど不安定な核種ということになる。
放射性核種の崩壊は自然に起きる物で、崩壊までの期間は確率によってのみ左右される。
一つの放射性核種を対象として、その放射性核種がいつ崩壊するかを予想することは出来ない。


炭素14
炭素14とは
炭素の放射性同位体。(12C、13C、14C)
炭素の内の0.00000000012%(約1兆分の1)を占め、原子核は6個の陽子と8個の中性子からなる。
炭素の大部分(98.9%)を占める炭素12は6個の陽子と6個の中性子、1.1%を占める炭素13は6個の陽子と7個の中性子からなる。
半減期は5,730年で、ベータ崩壊をして窒素14になる。
この性質を利用して、有機物中に存在する炭素14は放射性炭素年代測定に使われる。
12C 13C 14C
陽子
中性子
質量 12 13 14
存在比 98.9% 1.1% 1/1兆

炭素14の生成と変化
炭素14は、大気上層で一次宇宙線によって生成された二次宇宙線に含まれる中性子と大気中の窒素から生じ、生成後ただちに酸素と結合し二酸化炭素になり、大気中に拡散する。
生成した中性子と窒素原子から以下の反応によって炭素14が生成する。
     n + 14N → 14C + 1H



炭素14法による年代測定
測定原理
生体と炭素14
炭素14は、約55730年の半減期で減じていく性質をもっているため、これを利用して試料中の炭素同位体12/14比から年代を推定することができる。
自然界には空気中に一定量の14Cが存在しており、これは動植物の体内についても同じことが言える。
二酸化炭素中の炭素14は、光合成によって植物に取り込まれ、食物連鎖で動物にも広まっていく。
光合成で取り込まれる二酸化炭素は大気中のほぼ一定の炭素14量を反映しているが、光合成後は炭素14が新たに付加されない。
したがって、生物の細胞に定着した炭素14は、光合成で作られた時点から減じていくと見なせる。
さらに、生命活動をやめると体内の14Cも補給がとまるのでそのまま残る。
生物の遺体から試料を得て測定した場合、その細胞に利用された炭素はいつ光合成が行われたかが分かる事になる。
つまり、炭素14法は、生物が死んでから現在までの年数を測定することになる。    

測定できる年代
約6万年前が炭素14法の理論的限界になる。
実際の測定では、β線測定法では3~4万年程度、AMS法では4~5万年程度が測定限界。

年代較正
C14年代値を算出するときに、過去においても大気中のC14濃度が一定であると仮定しているが、主に、地磁気が変動することによって、地球に降り注ぐ宇宙線が変動すると、その結果炭素14の生成量が変わってしまう。
また、発掘後に置いた土壌に含まれる有機物や空気中の煤煙、タバコの煙や手垢が付着するだけでも測定値は大きく変わってしまう。
そのため、現状では、炭素14年代と実際の年代は、必ずしも一致せず、誤差が50~100年であるといわれ、絶対的な信頼をおける測定法とはいえないが、年輪年代法の基準となる試料の炭素14濃度を測定して較正した、C14年代を暦年に変換する較正曲線がつくられるなど、測定精度を高める努力がされている。
較正年代は、暦年代 (Calendar year) とも呼ばれ、「実際の年代」という意味である。

表記法
放射性炭素年代は、BP (Before Present もしくはBefore Physics) で表記されるが、これは大気圏内核実験による放射線の影響をあまり受けていない1950年を起点として、何年前と実年代が表記される。

較正曲線を用いて較正された年代値、つまり、炭素14年代を実際の年代に較正(基準に照らして正す)したという意味で、西暦1950年を起点とした年数には calibrated(較正済み)を意味する「cal」をつけて「calBP」で表される。
あるいは西暦紀元を基準とする場合は「calBC」ないし「calAD」と表す。

測定方法の原理
    AD1950年の炭素14量をN個とする。
           
    計測した資料の炭素14がN/2個ならば、AD1950年より5730年前(=calBC3780年)
    計測した資料の炭素14がN/4個ならば、AD1950年より11460年前(=calBC9510年)

しかし実際には、過去の炭素14濃度が現在より大きかったために、炭素14原子が沢山残っていて、見かけ上若い年代を示している。
例えば、測定値が10,000yrBPとすると、暦年はほぼ11,500calBPに相当する。


2つの測定法
ベータ線計測法
最初に開発された測定法は、ベータ線計測法といい、炭素14が電子と反電子ニュートリノを放出して窒素14(普通の窒素)に壊変するときに放射されるベータ線を検知して数える。
現代の炭素1gでも4~5秒に1個しか壊れないので、計測には時間がかかり、試料もグラム単位で必要とされる。

AMS法(Accelerator Mass Spectrometry = 加速器質量分析計)
加速器で炭素14を直接数える方法。
必要な試料量(1mg程度)、測定時間(30分~1時間程度)共に大幅に改善され、高精度化・高効率化になってきた。
また約6万年前まで測定可能となった。


考古学における炭素14法の利用
測定対象物
基本的に有機物が遺物に含まれていなければならず、石器や金属などは測定できない。
しかし、土器を例に取ると、土器本体ではなく遺跡から土器と一緒に発掘される木炭や貝殻、粘土の中に混ぜた植物繊維組織や加熱時のすす、土器内の残存物などから、土器の製造について年代測定が出来る。



参考資料
新編教養物理学」 (学術図書出版社 1985 原島鮮 )
「チャート式シリーズ 新物理II」 (数研出版 1978 力武常次)

Wikipedia 「放射性炭素年代測定」 「半減期」


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放射性炭素年代測定
生物遺骸の炭素化合物中の炭素に1兆分の1程度以下含まれる放射性同位体である炭素14(14C、カーボンフォティー)の崩壊率から年代を推定すること。